新型コロナウイルス 感染症ワクチン「スプートニクV」
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31.03.2021 в 14:52
「ボストーク通信」ロシア週刊情報誌は2021年3月29日付1380号にて在日ロシア連邦通商代表部よりの第7回記事を掲載されました。


新型コロナウイルス感染症ワクチン「スプートニクV」

-日ロ関係の軌道上の新たな衛星-


日ロ両国の政府は「8項目の協力プラン」を実現するために集中的かつ地道な作業を継続していますが、8項目のうちの一つは、生活の質及び高度な健康の維持の分野における協力です。
医療・保健分野の共同プロジェクトにはとりわけ強い関心が払われており、健康や関連インフラ・技術への投資、及び国民の健康寿命伸長のための良質で好ましい環境の整備に向けた投資は、日ロの経済協力における新たな優先事項の一つになっています。 ロシアの製薬産業は最近10年間で飛躍的な発展を遂げ、現在は実質的にほぼ全ての重要な薬剤を国内で製造することが可能になっています。

ロシアではATC(解剖治療化学)分類法の全てのグループの医薬品が、世界でもよく知られたポピュラーなジェネリック医薬品から高度なバイオ医薬品に至るまで製造されており、統計によれば、現在は国民の需要の約84%を国産医薬品が満たしています。これはロシアでは過去最高の水準です。 ロシア産医薬品の輸出額は安定的に伸びており、年間8億㌦を超えています。輸出先は130ヶ国以上にのぼります。 新型コロナウイルス感染症の拡大により世界は多大な困難に直面していますが、一方でパンデミックは特に医療・製薬分野における国家間協力の新たな可能性の窓を開くことにもなりました。

ロシアと日本は過去にもパンデミックの状況下で医療協力を成功させた経験があります。1960年代初めに日本でポリオ(急性灰白髄炎、小児麻痺)のウイルスが蔓延しましたが、その感染拡大を止める一助となったのがソ連で生産された生ワクチンでした。
当時の日本政府にとっては、ソ連製医 薬品の輸入許可と国内登録は全く前例のないことでした。しかし、ポリオに感染した子供の母親たちの運動、市民団体やマスメディアや両国の学者たちの積極的な支持、そして輸入者となった日本のイスクラ産業株式会社が果たした重要な役割により、日本にワクチンを速やかに供給することが可能になりました。ソ連から日本へのワクチン供給に関する合意書は1961年4月11日に締結され、その結果2000万人もの日本の子供たちがワクチンを接種して感染の脅威を免れることができました。

2020年に世界は新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われました。世界の保健産業と製薬産業はCOVID-19との戦いの準備ができていませんでした。医師も病床も薬も足りず、ウイルスとどやって戦うのかという基本的な理解もありませんでした。各国は病院をコロナ用に転換し、新たな診療所を建設し、専門の違う医師や医学生までも動員し、製薬業ではワクチン開発競争が始まりました。

ロシア直接投資基金(RDIF)は2020年8月、新型コロナウイルス感染予防ワクチン「ガム・コビド・ワク」、商品名「スプートニクV」(注1)の生産を予告しました。開発者はガマレヤ名称国立疫学・微生物学研究センターで、開発費は約2000万㌦だと発表されました。 このワクチンが連邦保健省によって登録されたのは2020年8月11日で、世界で最初に公式登録された抗COVID-19薬剤となりました。
2020年12月10日にはモスクワでリスクグループの人々に対する無料接種が、1月には一般向けの大規模接種が始まりました。各地方の保健省やコロナ対策本部のデータによれば、これまでに「スプートニクV」の接種を1回または完全に(2回)行った人々の数は、ロシアと外国を合わせて700万人以上にのぼります。

ワクチン「スプートニクV」は2つのコンポーネント(成分)から成り、3週間の間隔をあけて2回、筋肉内注射を行うことで接種されます。接種されるとベクターが細胞に入り、細胞によってSARS-Cov-2(新型コロナウイルス)のSタンパク質がつくられ、それに対する反応として体内でSタンパク質への抗体が産生されます。2回目の接種は記憶B細胞の産生を促すもので、より完全な抗感染症免疫を得ることができます。したがって、完全な免疫応答が行われるようになるのは、適切な期間を守った場合は初回の接種から42日目ということになります。免疫はワクチン接種から2年間以上、血中に保持されます。
当初、ワクチンの特性を維持するためには、輸送及び保管の全工程で-18℃以下での温度管理を行う必要があるとされていました。その後、ミハイル・ムラシコ連邦保健相は、同省が登録証明書を修正し、「スプートニクV」の輸送及び保管の温度管理条件を+2~8℃にしたと発表しました。これにより地方や外国への輸送が大幅に簡素化、低コスト化されることになりました。 保健省が登録した「スプートニクV」の生産者出荷価格の上限は、2つのコンポーネント合計で1942㍔(26㌦)です。2021年2月25日にはこの価格が866㍔(11.5㌦)に引き下げられたことが発表されましたが、これは大規模生産技術の習熟と最適化によるものです。
輸出価格については、RDIFは2回分10㌦未満で全ての国に同じ価格で供給できると保証しています。

当初、外国の専門家たちは「スプートニクV」に厳しい反応を示し、プレゼンテーションを行った時に有効率に関する証拠や第Ⅰ~Ⅱ相臨床試験に関する学術論文がないとして開発者を批判しました。2020年9月7日に始まった第Ⅲ相臨床試験の中間結果の発表が予告されると、「スプートニクV」に対する国際社会の態度は大きく変わりました。そしてその中間結果は2021年2月2日に英医学誌「ランセット」に掲載され、「スプートニクV」は他の外国のライバルを大きく上回る91.6%の有効率を示したことが明らかにされました。第Ⅱ相と第Ⅲ相の臨床試験は、ロシアの他にもベラルーシ、インド、ベネズエラ、UAEで実施されました。 「ランセット」での第Ⅲ相の中間結果の公表後、外国のマスメディアは「スプートニクV」に対する肯定的な評価を報道するようになりました。
例えば、米ブルームバーグ通信はこのワクチンを「ソ連時代以来で最も重要なロシアの科学的躍進だ」と報じました。米ウォールストリートジャーナルは、「スプートニクVは世界のワクチン競争におけるロシアの重要な勝利を示しており、ロシアの科学や医療の可能性に信任を与えるものであり、試験データを公表しないまま急速にワクチン接種を進めたことでモスクワが浴びた一部の非難を取り除くための役に立つ」と指摘しました。
カナダのラジオ・カナダは、「スプートニクVは信頼を勝ち取り、ロシア科学の大きな勝利となった」と伝えました。
ノーベル生理学・医学賞を受賞したオーストラリア人学者のピーター・ドハーティ氏は、「スプートニクVの有効率(90%以上)は素晴らしい。それに加えてロシアは優れたワクチンの開発を長い間行ってきた歴史がある」と指摘しました。 米国における免疫学の第一人者とされるアンソニー・ファウチ氏(国立アレルギー・感染症研究所所長)は、「ロシアや中国が信頼できるワクチンを持っていれば、自国だけでなく他の国にも供給できる。それが人類全体を守るための道だ」と述べました。
ハーバード大学医学部感染症局長のダニエル・クリツキス氏は、「私が読んだものから判断する限り、このワクチンは一般的な冷蔵庫の温度帯で保管できる。超低温での保管が難しい国への供給が可能になるので、大きな強みになる。つまり、一部の国ではワクチンの適用が大幅に容易になるということだ」と述べました。 「スプートニクV」の外国市場向けの生産は、RDIFのパートナー企業らによってCIS諸国、インド、ブラジル、中国、韓国その他で行われます。

2021年3月末にはカザフスタン・カラガンダ市の製薬工場が15万回分、4~6月には毎月60万回分のワクチンを生産する予定になっています。また、ベラルーシでも3月末に月産50万回分の生産が始まります。RDIFのキリル・ドミトリエフ代表取締役によれば、全世界における「スプートニクV」の生産量は3月末には最大で月間3000万回分になります。 現在、「スプートニクV」の増産及び現地生産の展望を確認するために、その他にも多くの国と交渉が行われています。
2021年3月にはRDIFは、EU当局による「スプートニクV」の承認はまだ下りていませんでしたが、イタリア、スペイン、フランス、ドイツにおける現地生産についての合意を取りまとめました。欧州医薬品庁(EMA)による有効率、安全性、品質の欧州基準への適合に関する監査は3月4日に始まりましたが、ハンガリーとスロバキアの2ヶ国は、欧州共通の薬剤登録を待たずに独自に「スプートニクV」を承認しました。EMA健康脅威・ワクチン接種局のマルコ・カバレリ局長の予測では、EUにおける「スプートニクV」の登録時期は2021年5月です。

世界市場における「スプートニクV」の需要は十分に大きいですが、ロシアは他国への供給を優先したり、コロナワクチンの独占的な供給国になろうとしているわけではありません。確かにロシアは、国際舞台におけるポジティブなイメージを強化する可能性の一環として、商業ベースや人道支援ベースで外国にワクチンを供給することを検討しています。しかし、現在の優先的な政策は、ロシアとその近隣国が新型コロナウイルス感染症の集団免疫を獲得するための条件を整え、経済を再起動して経済危機を共 に乗り越えることです。 日本はアジア太平洋地域におけるロシアの最も近しい隣国であり、優先的なパートナーです。

私たちは、両国の国境往来を速やかに再開し、商談やビジネスミッション、観光や地域間交流が再び活性化することを望んでいます。そのために日本国民の大規模なワクチン接種を速やかに開始することは両国政府の共同の優先事項であり、「8項目の協力プラン」の課題にも完全に合致しています。 ロシアは日本に「スプートニクV」を供給する用意があり、日本の製薬業界も国内での流通に必要な登録や手続きを全て行った上で輸入することに一定の関心を示しています。また、日本のパートナー企業らにワクチン生産の技術移転を行い、国内の現行の製薬工場で現地生産を行う可能性も検討されています。日ロ協力の追加オプションとして、日本人の受入体制のあるウラジオストクの専門医療施設でスクリーニングとワクチン接種を行うための、日本人の個人及びグループ向け医療ツアーを実施してもよいかもしれません。

ボストーク通信の読者の皆様ならびに全ての日本国民の皆様のご健康をお祈り申し上げつつ、在日ロシア連邦通商代表部にお問い合せやご提案を頂けますようお待ち申し上げております。


担当窓口: クラソフスカヤ・アレクサンドラ (Ms. Aleksandra Krasovskaya)
E-mail: Tokyo@minprom.gov.ru
Tel: 03-3447-3201
Fax: 03-3447-3221
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